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- 2025/06/16(月) 08:16:14|
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著者は比較惑星学からアストロバイオロジーというかなり
融通の効く研究所に移行しました。それだけにより大きい
視野をもって語っています。タイトルの駒場講義録とある
ように教養学部生に講義して各々の章には学生の質問に
松井さんが答える形です。
無論、惑星科学の講義がメインですが、現在流行の系外惑星
のトピックス、パチンコ玉をピストルから発射させて地中へ
打ち込み、彗星が地球へ衝突した場合の破壊力をミニモデルに
した実験の内容などを紹介しています。
私は松井さんの著作をいくつか読んでいます。彼の著作の
長所は初心者にもわかりやすいように惑星科学の原理を
説明していて、すんなり頭に入ってくること。
興味深いトピックスを1冊の本に豊富に凝縮していること。
本書は読み応えあります。昔の松井さんの著作からみると
幅広くした分、少し密度が薄くなった印象は否めません。
著者の専攻は比較惑星学。かなり昔、NHKで「地球大紀行」というシリーズをやった時の監修者としても知られる。その際には、松井氏(当時助教授)の水惑星理論が活かされた。本書は、昨今の学生の学力低下を憂いた著者が、学生に興味を持たせるよう教養学部の学生のレベルに合わせて、著者の専門の惑星学、それに基づくアストロバイオロジーの考え方等を講義した結果を纏めたもの。
結果としては成功と言えよう。地球の成り立ち、普遍性、そして文明論。そして生命とは何かという考察から始まって、アストロバイオロジーという考え方に導く。平たく言えば「私達はどこから来て、どこへ行くのだろう」という疑問に迫る学問で、これを地球レベルで考えようという試みだ。そして地球を離れ、太陽系内の考察に移り、更に太陽系外の惑星へと話が進む。勿論、興味の的は、太陽系外の惑星に人間と同じような知的生命体が存在するか否かという事である。そして、もう一度地球の起源に立ち返り、地球の進化の過程を考察する。そして、地球に対する天体の衝突が地球の進化に大きな影響を与えたことを検証する。
私は松井氏の著作を数多く読んでいるので、特に目新しい点はなかったが、著者の考えが順序立てられて整然と語られているので読みやすい作りになっている。つまり、当初の目的は達していると言えよう。ただし、この程度までレベルを落とさないと学生が付いて行けないとなると、東大の学生のレベルも暗澹たるものですなぁ〜。
地球は、地球上の生命は、どのように生まれて、現在のような姿になったか、それを研究するために、宇宙の探索は、どのような方法で行われているか、他の惑星や衛星の研究から判明したこと、そこから考えられる地球の進化、地球のこれから、などが論じられています。
月は、どのようにできたか、火星、木星の衛星等の様子、彗星の探求など、興味深い話が目白押しです。また「学問の面白さ」が、十分伝わる本だと思います。
理系の教養の講義録ですが、「数式ばりばり」という本では、ありません。数式はほとんどなく、講義の語り口調っぽい文体です。大学の授業だけあって、研究の方法も、(概要だと思いますが)述べられているところが多いです。
難しいところも、ありました。理解できなかったところこも、ありました。が、興味深く、大きなテーマにひかれて、最後まで読むことができました。
新聞下段の広告をみて、題名だけで手にとってみた。地球、星、宇宙といった話はいくつになっても男性の心をくすぐるものだ。
本書のテーマは「アストロバイオロジー」という新しい学問分野である。
・我々はどこからきたのか
・我々はどこへいくのか
・我々は宇宙で孤独な存在か
の三つを研究のゴールにした学問だそうだ。
物理学や化学は宇宙のどこへいっても成立する普遍的な法則だが、生物学は今のところ地球でしか成立しない。宇宙規模で成立する生物学はいったい可能なのであろうか。これがアストロバイオロジーの出発点である。
この議論はテーマとしては理解しやすいが、実際にはとてつもなく大変な議論だ。なぜなら、微生物も魚も鳥も人間も宇宙人も、ひょっとすると神までをも同次元で包含するからである。宇宙のどこででも成立する生物の構造、生態、文明、哲学、宗教。この議論は現在地球上にある「知」の全てを包含する議論の枠組みなのである。
しかしこの議論そのものについては冒頭と最後で若干コメントがあるのみ。大半は惑星物理学、地球物理学のかなりハードな講義が続く。松井氏によればこの講義は「空回り」に終わったそうだ。なにしろ知識量が膨大だ。咀嚼するだけでも容易ではあるまい。この講義をとった学生さんに同情する。
地球はあと5億年もすると二酸化炭素が10分の1に減り、光合成ができなくなって生物が消える。温度が上昇して20億年後には海が蒸発してなくなり、50億年後には膨張した太陽の熱で地球全体がどろどろに溶け蒸発してガスとなって銀河系宇宙に散っていく。これが地球の未来だという。物理学はこんなふうに神の領域にこともなげに接近する。これが本書のいちばんの魅力である。アストロバイオロジーは十分に議論されたとはいえないが、本物の学者のハードな知の世界を堪能することはできる。やや気合を入れて、どうぞ。
私は1980年代にCOSMOS(Carl Sagan教授による科学番組)で当時の最新宇宙論について興味を持ち、知的興奮を覚えました。そして本書を読むと、「科学は(エラーの)自己修正過程である」というSagan教授の名言の通り、色々なモノの「起源」に関する旧来の常識が最新の科学測定の結果により覆り、新説が生まれている様子が分かり嬉しくなりました。特に太陽系・地球・月の起源に関する議論や系外惑星系の探索に関する話は、読み応えがあり、知的興奮を覚えました。また「より深く理解する」姿勢が学べます。(例:月の起源と角運動量)
東大の教養学部生(理科一類?理科三類)向けの講義ですから、この内容は理系大学生以上の教養(教養コース程度の物理)があれば理解は十分可能です。文系な人も細かい部分はフォローしにくいかもしれませんが、最新科学が解明しつつある事実を追うだけでも楽しめるのではないでしょうか。この本が面白いと思った方はカミンズ氏の著作「もしも月がなかったら―ありえたかもしれない地球への10の旅」「宇宙100の大誤解」もお薦めします。また時間とお金の余裕があれば、Carl SaganのCOSMOSのDVDセットもお薦めします。